Today`s Buyer
株式会社 三越伊勢丹 伊勢丹新宿店メンズ館
メンズシューズ バイヤー・宮下創太氏
伊勢丹新宿店のメンズ館地下1階
メンズシューズ売り場のバイヤー
昨年までは同メンズ館6階
メンズコンテンポラリーのフロアマネージャー
【Q.1】 現在の店頭での動きを教えてください。
以前は、スーツと合わせる高額なフォーマル靴が高単価という事もあり売上の主軸でしたが、今年は革靴でもカジュアルダウンで履けるものがやはり強いです。J.M.Weston、Paraboot、Church's等が良く動いています。また、ブランドの世界観が強いものは固定ファンも多いので、市況に左右されにくいです。
商品で言うと、Parabootの代名詞でもある「シャンボード」そして、JM.Wetonのローファー「180」が根強いです。また、6月ですがサイドゴアブーツの問合せが非常に多いです。雨の日需要もあると思いますが、この秋に向けて需要の高まりを感じます。これまではDARK BROWNも人気がありましたが現在、色は断然BLACK。雨にも強いバインダーカーフの需要も高まっています。
【Q.2】 注目しているBrandはどのように見つけ、繋がりますか?
圧倒的にInstagramです。
SNSに力を入れてるD2Cブランドや業界内での口コミも含めて探し、ダイレクトメッセージでオファーする事もあります。「靴」はデザインと機能性双方が大事になるので、写真を見ていて「生産背景」を読み取れるかがポイントとなります。工場、手仕事の写真があるかどうか、ではなく製法やモノづくりに対しての姿勢が写真を通して伝わるかという点が重要。デザイナーの感性が読み取れるかもポイントで、その場合は別注や、まずは短期のPOPUPで様子見る事も多いです。また、一つのブランドでどれだけの幅があるか、も見ています。
「both」というパリ拠点のチャンキーなラバーソールが特徴の靴ブランドの例を言うと
上記2つとも同ブランドですがスタイリング等を全く変えていて、見る人によって「自分にも似合うかも」という幅を示唆出来ている点が魅力。
靴の場合、オンラインでのマイナス点は「サイズ」と「コーディネート」の2点。サイズに関しては同じ27㎝でも履いてみないと合うかわからない、という木型によるサイズ感の違いが挙げられます。コーディネートに関しては、自分のクローゼットの洋服と合うか、自分の肌の色、スタイルでどのように見えるか、という不安で購入に至らなかったケースが非常に多いです。
その為、身長やスタイルの異なる複数の人間で履いてみてレビューをする投稿を@isetanmens_shoesのInstagramでも行っています。普段スタンスミス27㎝の人が履いてみてAのブランドは大きかったのか。等、一般的に所有率の高い靴と比べ、返品率を下げる工夫もしています。
【Q.3】 現在、Instagramはブランドもお店も力を入れていますが、上記以外にどういう点を見ていますか?
「世界観をどう伝えるか」がポイントになる点は皆さん理解されていると思いますが、バイヤー側からすると「統一された写真をみたい」訳ではありません。例えば、YOAKという靴Brandが伊勢丹でも非常に売れています。@yoakinsta
このブランドを例に出すと、「ジャケットとシャツに合わせるスニーカー」というコンセプトがわかりやすく、今のご時世にもハマっています。仕事の日はウォッシャブルセットアップに。休日もシャツにジーンズやチノパンといったスタイルに合わせる事ができます。クールビズや在宅勤務をきっかけに、スーツを着ていた年配層にとって、どこまでカジュアルダウンさせたら良いか、ビジネスカジュアルの度合い、というものを「写真」を通して視覚的に示唆する事で、購入に繋がっていると考えています。
また、誰にタグ付けされているか、も良く見るポイントです。ご自身のフィードの右に、第三者がタグ付けされている投稿を確認できるボタンがあり、ここを見て「誰が着用した事があるのか」「どのブランドと過去コラボしたのか」「デザイナーが誰と飲み友達なのか」含め、確認しています。Aとつながっているなら、伊勢丹でイベントをする際はBとも繋げて…等、ここで仕掛け案を膨らませる事も多いです。
フォロワーを重視する傾向がありますが、絶対1万無いといけないわけではなく、小規模であっても、他社とのつながりによって、面白いプロモーションにつなげられる可能性を秘めているブランドは魅力的です。
Instagram以外でも公式問合せから来るメールも全て目を通して、興味があれば会う事も多いです。
【Q.4】 もう一つのサイズ問題はどのように対応されていますか?
Yourfitという、店頭で足を一度測れば本人の足データが取れるシステムがあります。一度測って頂ければ、オンライン上でも活用でき、自分の足に合う靴を可視化できます。
【Q.5】 商品やブランドの仕掛けはどのようにされていますか?
「新商品でました」「雰囲気のある写真」だけでは消費者を振り向かせる事が難しい時代です。コラボレーションも市場に溢れているので、異業種や「こことやるの?」というサプライズ感を大事にしています。過去にも伊勢丹では、Fashion×「自転車」「ペットグッズ」「床屋」・・・等、意外な所と組んできました。
例えば「床屋」は下高井戸にある名店 @barbersakota と福岡のセレクトショップ@apple_butter_store とのトリプルコラボレーションの商品を製作。ストリートファッションの福岡の牽引役でもあるApple Butter Storeのオリジナルボディに@barbersakotaのLOGOを載せて伊勢丹で販売し、即完売しました。
【Q.6】 この秋に向けて、どのような視点で商品を探していますか?
去年よりは数字が安定しています。カジュアルビジネス兼用できるもの。家中需要も引き続き注目しています。これから出勤や外出が増える事も想定して、実用的なビジネスシューズ等も小さいバブルになる可能性があると考えています。在宅期間中、「鍛えて痩せた」、「家に居て太った」という方もいるので、サイズが変わった人が多いのも事実。洋服は勿論、シューズも体重が変わるとサイズが変わりますので、買い替え需要も出るタイミングです。90sのブームからカジュアルシューズの需要はスニーカー一辺倒でしたが、この秋からはサイドゴアブーツやプレーントゥ、Uチップのダービーシューズなど、カジュアルな革靴の品揃えを強化しています。
また、引き続き、メンズ、レディース、を分ける垣根は低く、All Genderをターゲットにしているブランドが多いです。また、お客様との会話からは、サスティナブルな取り組みへの関心度もかなり高くなっている事を感じます。
土に返る素材、革をなめす時の方法、また、産地への質問も増えて来ていて、感度が高い方は工場の児童労働についての質問もありました。
シューズケア、シューズリペアのサービスも含め長く使用頂く事は勿論ですが、サスティナブルの意識がブランド側にある事は必須となってきています。